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映画 『マイマイ新子と千年の魔法』 (☆オススメ) [Movie]


マイマイ新子と千年の魔法 [DVD]

マイマイ新子と千年の魔法 [DVD]

  • 出版社/メーカー: エイベックス・マーケティング
  • メディア: DVD


これは感動しましたよ。のっけから言っちゃうけど、傑作の部類ではないか。
観終わったあと、「この人にはオススメしたいな」と思った人全員にメールしたくなったくらい。
「これ、、観てほしいな」だけでいいという気もするんだけど、自分なりにちょっと魅力というか、感想を書いてみようとおもう。まあでも長ったらしいので読まなくても全然いいんだけど(笑)
本作は、特に、お子さんのいらっしゃる方には「推薦図書」的な位置づけで可能な限り普及してほしいわ、ってな感じでして。

とりあえずこちらを・・・
「マイマイ新子と千年の魔法」予告編(90秒)
この映像でピンと来た人はTSUTAYAへGO!!

設定や物語については細かくは書かないけれど、昭和30年代前半くらいの、自然の豊かな田舎(その近くには復興過程のガラの悪い歓楽街もある)で暮らす少年少女たちの日々の、歓び、ドキドキ、そして葛藤や困難を、「詩情」豊かに描いたお話です。

というと、なんだかありふれた作品のように思えてしまうな。
なんというか、一見ありふれた「教育的アニメ」のように見えてしまうのは確かなのだけれど、言葉に変換しにくいがじんわりと沁みてくる、独特のインパクトがある。

最近ぼくは、年齢なのか、あるいは自分の子供が育ってきたことによる捉え方の変化なのか、戦後から平成不況以前まであたりの日本を舞台にしたある種の作品を否定的に語るさいに度々用いられる、懐古趣味、郷愁、感傷といったものを、わりと素朴に肯定している。
すでに消滅してしまった風景や、今とは違う美点や欠点をもった社会や共同体を正面から描いたものを懐古だと言ってしまうのは簡単だけれど、作品によってはそういうレッテルで片付けるだけでは足りないものも勿論ある。
娯楽作品というのは現代社会の問題を読み解いたり反映したりするためだけに存在しているわけじゃないし、「人にとって、ほんとうに大切なものって、何だろうね」みたいな、口にするのも気恥かしくなってしまった、多くの人がとっくに「片付いた」と思ってしまっているシンプルでナイーブな命題を喚起させるって効用も、もろちんあるわけでね。
まあつまりぼくはこれを観て自分にとって「大切なもの」がどういうものなのかということを感じさせてもらった。

主人公・新子の少女時代というのはぼくの親の世代のころなんだけれど、昭和後期に田舎で少年時代を過ごしたぼくのノスタルジーを刺激したのは確かであり、ていねいに描かれた美しい風景描写にしみじみと見惚れてしまった、というのがぼくにとっての魅力のひとつ。

しかし、この映画はなんといっても、子供たちの感性、想像力というものが、イメージ豊かに描かれているというのが、もっともすばらしい点だとおもう。

子供の内面を主軸にした物語をみるときには、子供の視線を通じて、この作者は何を伝えようとしているのか、というところをやはり意識してしまいます。作品の内容とかテーマにもよりますけど、子供をどういうふうに描くかに、作り手の人生観とか世界観がのぞけますからね。

子供は子供にしかない世界の見方というか、拡がりや奥行きがあって、仲のいい近所の友達なんかと目いっぱい遊んで、これ以上【向こう】へ行ってはいけないというところまでドンドン深く掘り進んでいくべきだとぼくは思ってる。まあ、普通そうか。
その【向こう】というのは、地理的な境界であったり、子供の頭で考えられることの限界だったりする。そこにブチ当たって跳ね返されることで、オトナにちょっとだけ近づくような何か。んで、そういうものに少年、少女期に触れることは、その後の人生、とくに大人になってからポジティブに活きてくると思うんだよね。
観ていただけたらわかると思うけれど、この映画はそういうところをナチュラルに描いてるんですよね。子供っていうのは、子供にしか感じられないこと、子供にしかできないことをしてればいいんだよ、とおもう。

マイマイ新子ちゃんは、空想ばかりしている。
この新子ちゃんの暮らす土地には、かつて、千年前の平安時代、貴族の屋敷があった。新子ちゃんは、そこに暮らしていたかもしれない1人の幼い少女(清少納言?)の暮らしを自分と重ね合わせ、空想している。
田園のなかの新子ちゃん自身の家の近所のいたるところに、堀とか建物の痕跡が実際に残っていて、そこから自由に空想を拡げる。この演出が、じつに素晴らしいんですよ。
千年という時間の隔たりを、少女の空想ひとつでつなげてしまう。なんというポエジーか。千年前に生きていた人は勿論「居ない」、でも「存在」してるんですよ。「感じる」ことができる。

ぼくは自分が日々子供と接していて、やっぱり何が子供ってイイなと思うかって、現実と空想が同列に存在してるってことなんですね。お母さんや友達や猫がそこにいるように、トトロも鬼もヒーローも「存在している」。先程も書いたけど、子供のころにしかない世界観がある。なんて可愛らしく、素敵なことなんだろうとおもう。
現実、つまり「ほんとうのこと」を知っていって架空の存在が決定的に否定されてしまうまでのあいだに、その世界をできるだけ拡げてほしいとおもう。このことは物凄く大事なことなんじゃないかと思っている。

まあそういうことをこの瑞々しい映画を観て感じました。
子供は大人の事情に振り回されて生きており、大人の世界の暗い部分に直面し、子供ながらにそこへ思いをぶつけていくというようなエピソードもあったり、また「そうなってしまうのか」という結末で締めくくられていたり、ひたすら清々しさに貫かれているわけではないんですけど、作り手のメッセージのようなものは十分に伝わってきました。

いやあ、ホントによかった。

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