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『恋の罪』 感想 (というか園子温さんdis) [Movie]


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苦手、と言いつつ観てしまう園子温。
批判のための文章なんて、とは思うんだけど、『恋の罪』を観て『冷たい熱帯魚』と同じようなことを思ったので、書いてみる。
何かの拍子にこのページへ来た方でファンのひとがいたら、読まないでください。

ちなみにぼくは本や映画は他人の感想を基本的に読みません。この作品が、そして園監督がどういう評価をされているのかよく知りません。観て思ったことを言います。

家庭や家柄という檻から自らを解放(堕落)させて「闇」(売春)の世界に生き場所を見出す女性の物語です。

まあなんというか、ありふれたVシネマ的というかメロドラマ的なエロサスペンスなんですが、何作か観たなかでぼくの抱いた園監督の特徴として、人間の性欲や暴力、下劣さ、残酷さ、救いがたさを描く、その表現の発露に躊躇がないというのがある。

しかし、ここが評価の分かれるところで、ぼくは、彼の一見「突き抜けた」暴力性は、とても陳腐なものに感じられてしまうんですよね。表現されるものはショッキング、センセーショナルに見えるけれど、俗に言われる「狂気」のようなものは実は全然感じられず、真面目で文学的な青年が露悪的にふるまい、「良識」のようなものを挑発しているだけのように見える。
まあつまりこれって、ぼくは園子温という映画監督に根本から否定的だって言ってるのと同じになっちゃいますね。ま、ぼくの印象です。

ひとつ加えておくと、園さんより遥かにレベルの低い監督なんて『おくりびと』(笑)の人を筆頭にゴマンといます。人は、どうでもいいものは無視します。無視できないのもひとつの愛なのです!!

で。『恋の罪』。
脚本にも文句がある。
神楽坂恵扮する主人公の主婦の性格、性格が育まれるに至った背景、つまりもともとの人間性が全然わからないまま、息苦しい家庭の圧力から逃れるように「きれいに、あまりにもきれいに」道を踏み外していく。この女性が転落していくための動機付けを、潔癖で、あからさまに異常な性質の旦那にひっかぶせている。もっと「フツー」の旦那にして、幼い子供がいるとかにしたらいいのに。つまり描きやすいとこに逃げている。
(あと園監督は、この巨乳なだけで芝居も下手で雰囲気もない女優を使うのはやめたほうがいいと思うけど、奥さんなんだね・・・)

大学の先生の先輩娼婦も、由緒正しい家柄、性に奔放だった父の「血」、その呪縛への対峙という、何だかどこかで散々みたようなクリシェな「反動」で動いている。じつにつまらない。
水野美紀扮する刑事も、彼女たち「踏み外した」娼婦の心理を本質的に「理解」できるようなキャラクター(家庭がありながら不倫相手の性奴隷になっている)になっていて、正直、物語のなかで何の影響力も持っていない。そしてあのラストシーンはなんだ!? きれいに締めくくろうとしやがって!! 「そうきちゃダメだよな?ダメだよ??・・・ああ、やっちゃった・・・」みたいな。

あとね、この人のは「エロい」けどエロスは感じないんですよ。微妙な違いをうまく説明できませんが。
これは意図的なものなのか、園さん自身の「スケベさ」の性質なのかわかりません。
そりゃ、神楽坂恵の肉体は物凄いですよ。でももうこの人の裸は結構です、って感じ。

まあなんかただのワルクチになってきたんで長々と書くのもアレだけど、妙にサバサバした残虐・エログロ描写、こうした表現の先鋭さの一枚(一枚なの)内側には、とても古臭くて通俗的な、文学的な感性がみて取れて、どうもぼくは鼻白んでしまう。まさに多くの人がこの監督のポジティブな特徴として挙げるであろう点を、「ダサいなあ・・」と感じてしまうのです。
この見方を「裏切られたくて」観ているのですけど。すなわち、まだ何かあるのではないか、と期待しているフシがある。
ということで次回作の『ヒミズ』も観てみますよ!!

ちょっと逸れるけど、そもそも(まだ続くんか)ここに出てくる女性たちは、もともとがある程度恵まれているんですね。「最悪」ではない。
生育環境の負の世代間遺伝で、10代のうちから、本作で使用されている言葉でいうと「堕ちて」しまっている女性などたくさんいる。そういう子の日常や「内面の空虚」を、派手なドラマに回収することなく語る言葉は、文学や文学的なるものには荷が重すぎるのだろうか。

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NO NAME

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by NO NAME (2015-07-15 09:04) 

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