映画 『バーン・アフター・リーディング』(コーエン兄弟) [Movie]
☆
感想。好きだなコレ。かなりスキです。
コーエン兄弟は90年代の作品は好きで観ていたのですが、僕の映画熱の沈静化と共にしばらく意識の表面から消えていました。久しぶりに観てみたら、「ビッグ・リボウスキ」(1998)の頃と味わいが何も変わっておらず、というか持ち味を残したまま「大人」の演出を身につけていて、改めて好感を持ちました。「味わいが変わらない」というのは、モノを作る人間に対する、ある意味強い賛辞です。
好き嫌いの分かれる映画監督(2人だけど)だと思います。作品の重点を骨格となるストーリー展開に置かないので、大多数のハリウッド映画的な「起承転結の明快さ」にまみれた映画経験の'常識'からすると、「ふざけている」「わかりにくい」という感想になると思われるからです。
CIAを辞めたキレやすい男、
ヒステリックなその妻、
超軟派の中年色男、
全身整形をして恋がしたいスポーツジム勤務のオバサン、
スポーツジム勤務の筋肉脳天気馬鹿、
…等の個性的な設定のキャラクターが、頭の悪すぎる企みやら出会い系サイトやらによってゴチャゴチャと絡みだし、複雑に錯綜していく様が、シュールな可笑しみを醸し出しつつ描かれていきます。全体の構成と音楽はサスペンス風味、キャラクター造形はコメディ、描写/演出はサスペンスとコメディ両方の味を出しています。「サスペンスの体裁に見せかけたコメディ映画」って感じですね。
豪華キャストを使いながらも肩の力を抜いた遊び(すぎ?)の作品として、なかなかの完成度だと思いました。
どの俳優の演技も愉快なのですが、ブラッド・ピット扮するスポーツジムの兄ちゃんが最高です。アメリカの筋トレ馬鹿的イメージそのまま。加えてやんちゃで可愛らしい子供のような表情や仕草。ブラッド・ピットのキワモノ役は昔から並々ならぬものがあると思っていましたが、更に磨きがかかっていました。見直しました。一流俳優ですよ彼は(笑) このブラピが観たくて、次の日に再度DVD観ちゃったくらいです。
今巷では『2012』なんていう「またCGで世界破滅させちゃうのね、もういいよ、くだらない。観なくてもわかるよ大体」みたいな映画が圧倒的なコマーシャリズムを伴って公開されているんですが、嫌味のない知性に富んだ脚本とユーモアたっぷりの演出に満ちた、こういう「しょうもない」内容の作品を観ると、なぜか安心します。個性的な才能の切れ味を経験することは、刺激だし、単純に嬉しいですからね。
オススメです。DVDレンタルしてみてほしいと思います。僕はずっとニヤニヤしっぱなしでした。そんな映画ってあんまりないよね?
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