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佐内正史氏の写真をみて、創作的な何かをしたくなった [Life]



佐内正史さん


この写真家の個展を偶然目にする機会があり、刺激と感銘を受けました。
(このひとについての情報を一切仕入れない状態で感想書きます)

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僕は表現手段としての「写真」というジャンルに関しては知見が浅いし、そもそも他人の撮影した写真作品というものが苦手だ。
写真は、家族や恋人、旅の思い出や記念写真等のスナップ撮影という「記録」の意味合いを越えると、撮影者の自我が映りやすい。写真はその手軽さによって膨大な数のアマチュア風景写真家を生み、自己陶酔を伴った手軽なセンチメンタリズムやノスタルジーをいたるところに散布している。僕はその匂いが苦手なのだと思う。
モノクロで老婆や子供を撮影したような写真も苦手で、イヤラしいと感じる。言っちゃ悪いけれど、底の浅いヒューマニズムを見出してしまい、それは少なくとも僕の中には何も残さない。

構図の良し悪しも、基本的に画一的な美的センスに支配されているように見えて、つまらない。
昔、北アルプスで、紅葉しているナナカマドの背景に穂高岳がのぞく「構図」の前に、素人カメラマンが何十人も群がっているのを見た。真っ赤な紅葉の背後に、黒く巨大な峰、さらにその背後に深い青空。たしかに、誰が見ても美しい。誰が見ても美しい風景に興奮して群がって、一様に片目を閉じている。僕はそのとき実はプロの山岳写真家とたまたま同行していたのだが、そのジイさんも、ほとんど同じようなアングルで、素人よりも遥かに高性能なカメラで撮影していた。
写真をやる人は、「構図がいい」なんていう言葉で褒められたら、自分の作品の凡庸さを嘆くべきなんじゃないかと思う。

「恣意的に四角く切り取った世界」のなかの事物の配置加減と、色の組み合わせに、どのような価値の基準があるのかさっぱりわからない。いや違うな、、わかったうえで、明確に嫌っている。
つまり、オーソドックスだろうがあるいは奇をてらおうが「美しい写真」はひとつの芸術作品として逆に退屈で、撮影者の表現者としての感覚の鈍感さが垣間見えてツマラナイと感じるということなのだと思う。プロでもアマチュアでも。

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前置きが長くなってしまった。

そういうわけで多くの写真は苦手なのだが、今回たまたま拝見した佐内正史氏の写真群は、「よくわからなかった」。
印象が「よくわからない」のだ。彼の作品について感想を書こうとしている今も、彼の写真を言語に置換することを難しいと感じている。

どの写真にもオーソドックスでわかりやすい「美」がないし、才気の奔出が強い自意識を伴っているような感じがまるでしない。つまり「こういうものを撮って、こういう印象を与えてやろう」という、表現者としての「作為」が、もの凄く希薄なのだ。
単純なノスタルジーやヒューマニズムに回収されない何かがあって、その「何か」は、言語化を拒む種類の、力みもせず脱力もしない、ナチュラルな「視線」のようなもので、それが個性といえば個性のような気がする。とても独特だ。

赤い車ばかり撮ったり、下町の別段下町らしくない路上を撮ったり、自分が遊んでいるパチスロ画面を撮ったり、何の変哲もない公園を撮ったり、、何がしたいのかよくわからない。構図に計算が見えない。ただ無茶苦茶ではないので、前衛的なるものにも回収されない。カメラを構えているその写真家の、みつめているものがよくわからない。

しいていえば、時間、、過去の時間なのかもしれない、、事物を時間の一領域として見ている感じ、、すべては空しいのですみたいな、、その茫漠、さみしさ、あきらめ、、こんな感じになるのだけれど、う~ん、しっくりこない。

要は活動を続けるアーティストとしての「中軸」のようなものをこちらが掴みきれないということなのだが、写真は言葉の芸術ではないのだから、作品をかんたんに言葉に置換されてしまったら、それは写真家として一種の敗北を意味するのではないか。
言いがたい何かをこちらに残す。与える。それは言葉に依らないジャンルの芸術家として、大いなる尊敬に値するのではないか。
前段で書いたように写真は苦手だったけれど、こういう写真なら好きだ。好きというか、惹きつけられる。
今ぼくはもう一度佐内正史氏の写真を観に行きたい。上質な芸術というものが僕に与える大きな効果なんだけれど、創作的な何かを、したくなった。

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ここまで書いて、この作者についていろいろ調べてみた。
ちなみに僕がみた作品展はコレ。2010年の1/11まで開催しているそうです。
http://www.taromuseum.jp/exhibition/current.html

タグ:佐内正史
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